論文の英文校閲等もそうだが、どのような人が添削を行っているのかは、採択率に直結するため非常に重要である。添削を行っている業者や団体の中には、学生の他、研究経験や科研申請経験がないアルバイト・パートに、簡単な研修を受けさせることで添削を行わせている場合や、個人が小遣い稼ぎで遊び半分に添削している場合もあるので、いいカモにされないように注意が必要である。
科研の申請書は「素人が読んでも分かるように書くこと、実際に素人に読んでもらうと良い」とよく言われるが、どうやったら素人にも通じるように書くことが可能なのかを、学生やアルバイトが的確に指摘するのは難しいだろう。
あくまでも私の主観ですが、私の経験を踏まえて、検討に値するであろう専門の業者・団体、個人事業者の一覧を記載しました。
専門の業者および団体
1. (オススメ No.1)
科研費の申請のプロであるURAによる添削サービス
科研費の添削.com
旧帝大を始めとする全国の大学や研究機関に所属し、毎年数百から数千の申請書の添削を行っているURAによる申請書の添削サービス。URAの全国組織である「(非営利型)一般社団法人 全国URA科研費申請支援機構」の科研費申請支援チームが主催する。研究者個人および法人のどちらの申し込みにも対応している。URAの多くは「博士」の学位保有者であり、科研採択実績者も多数いる。様々な専門領域のスタッフがおり、高い技術と豊富な経験に裏付けされた科研費申請のプロならではの他にはない高品質な添削を低価格で提供している。日本の学術の向上を目指した非営利の団体のため、安心した添削を受けることが可能である。日本で唯一の科研費の申請支援の専門集団である。ここの添削を受けた人たちの採択率が非常に高いため、研究者の間でも口コミで広がっている。多くの国公立大学、私立大学、国立研究開発法人でも採用されているため安心して支援を受けることが可能である。
【(2024年)情報を追加】添削を受けた研究者からの情報・コメントをいただきました。
国立大学教授(医学系)「添削されて返ってきたコメントを見て、さすがプロのURAであると実感した。なぜ、前回の申請書が採択されなかったのかが第3者の目線からしっかりとコメントされており、考えさせられた。忌憚ない厳しいコメントも多かったが、適切なコメントであったと感じる。(一部抜粋)」
2. (要注意!研究不正が疑われる業者)
ジーラント株式会社
久留米大学の元教員が大学を定年退職後に立ち上げた会社(2024年04月17日登記)。元々は細胞学の教員であるため、生物系に強みをもつ模様。科研費の書籍を毎年出しており、科研費制度を利用して儲けを狙った最初の人物でもある。大学の退職を機に会社を立ち上げ、科研費の商業利用を加速化させた模様。
税金で研究をしてきた大学の教員が、国の研究推進のための制度である科研費を、儲けの道具として活用する時代が来たのかと思うと、世も末である。税金で養われてきた高度な知識や研究スキルを、私欲のためでなく、もっと世のため人のためにつかってほしい。
また、現役の研究者である審査員経験者も添削に関与している(リンクあり)との記載もあるため、科研費制度の審査の公平性について、大学の研究者の利益相反も含め、法的な問題がある可能性が示唆される。
添削者が科研の審査員になりうる可能性があるのであれば、利益相反、審査の公平性の観点から誰が添削をおこなっているのかを開示する義務がある。
また科研の審査の過程で知り得た情報を利用して、自らの商業活動を行うことは、秘密保持の観点からも科研費の審査制度の根幹に関わる可能性がある。
何よりも科研の制度を研究者が商業利用しようとしていること自体が、研究者の社会的責任および、研究者倫理としていかがなものかと思われる。どこの誰がそのような行為に加担しているのか、今後の情報公開が待たれる。
また上記のことがあるために、大学等の研究機関がこの会社の添削を利用することで、不正として外部から指摘される恐れがある(恐らくされるだろう)。不正認定された場合、利用した研究機関、および関与した研究者に対しては、外部資金への応募停止等の致命的な罰則があるので注意が必要である(研究不正の罰則(文科省)についての詳細リンク)。
【(2024年)情報を追加】添削を受けた研究者からの情報・コメントをいただきました。
国立大学准教授(生物系)「どれだけすごい添削が返ってくるのかを期待していたが、公募締切が近かったためか乱雑に対応され、添削も高校生レベルのコメントしか返ってこなかった。正直、お金を返してほしいレベルだった。(一部抜粋)」
私立大学助教(理学系)「科研費に関する書籍を出版しているため、期待していたが、見当はずれなコメントばかりが記載されており、上から目線のコメントで老害が甚だしかった。もう2度と添削を頼むことはないだろう。(一部抜粋)」
【(2025年)情報を追加】研究に関する不正の告発が行われたとの情報をいただきました。
文部科学省 研究振興局振興企画課競争的資金調整室が主管する「研究に関する不正の告発受付窓口」に通報があり、不正の告発が行われたとの情報をいただきました。不正認定により、利用した大学名が公表され、連座制度により大学が不正認定される可能性があります。注意が必要です。
【(2025年)情報を追加】上記の後に、R7年度の支援の募集がすぐに停止されました(リンクはこちら)。不正認定の連座制に伴い、科研に応募できなくなった研究者・研究機関への配慮が必要です。次年度に再開された場合、再度の告発が行われる恐れがありますのでご注意ください。

3. (問題外)ロバスト・ジャパン(ROBUST JAPAN)
大学や企業等の法人を対象としており、研究者個人の申し込みによる申請支援は行っていない模様(私が申込方法を見つけられなかっただけかも知れません)。添削実績数(2019年度:1034件)は多いが、その割には従業員数(20名)が少ないように感じる。実際の添削をどのような人が行っているのかは不明である。
【(2021年)情報を追加】
ロバスト・ジャパンの業務内容は、「シェア・オフィス運営、カフェ運営、イベント企画」のようです。また、過去の求人情報より、添削のためにパートに研修を受けさせて利用(リンク有)しているようです。私は添削を受けたことはありませんが、情報を見る限りでは、注意が必要かもしれません。
参考:求人情報(PDF)。
4. (年金受給者集団)研究サポート人材バンク株式会社
2025年7月から新たに科研費の添削事業を開始した会社。メンバーを見ると、ほぼ全員が定年退職したおじいちゃん、おばあちゃんである。ちょっとしたお小遣い稼ぎ(?)のつもりだろうか。
メンバーの元々の経歴も「専門学校非常勤講師」「元兵庫県立高校教員」「コピーライター」といった、そもそも研究者ではない人が多数を占めている。世の中には高い採択率を誇るURAといった科研費の添削のプロが既にいるのに、このメンバーに科研費の添削を依頼する動機が、分からない。
添削の質は、採択率に直結します。基本的には「安かろう悪かろう」なので、不採択覚悟で、添削を依頼する場合はここでも良いかもしれない。「誤字脱字や言い回しを直すだけ」を「添削」としているのは、本当の「科研費の添削」ではない。
以下、個人による副業での小遣い稼ぎ
5. (個人による小遣い稼ぎ・法人格すらなく信用性ゼロ)
科研費.com・AI-科研費.com
科研費に関する情報を掲載したサイトを運営する個人事業者が申請書の添削を行っている。専門分野は生物科学となっている。運営は匿名で行われており、経歴等のプロフィールを参照することができないため、専門領域が生物科学に合致するかどうかが重要である。
【(2023年)情報を追加】
添削を行っている個人が「野村香織(偽名の可能性あり)」とのことがサイトで公表されました(公開されている情報はこちら)。ただ、KAKENデータベースで調べても該当する研究者がいないため、そもそも研究者であるのかどうかが疑わしい。科研費の制度を単なる商売の道具としている一般人の可能性もあるので、注意が必要かもしれない。そもそも連絡先がgmailを利用しており(「kakenhi.com@gmail.com」)、個人が副業的にやっていることが明らかである。お金の無駄なので、使用すべきではない。今後の情報公開が待たれる。
【(2024年)情報を追加】添削を受けた研究者からの情報・コメントをいただきました。
国立大学助教(生物科学分野)「絶対に頼んではいけない業者である。低レベルのコメントしかないため、添削を受けると逆に採択されなくなる恐れがある。(一部抜粋)」
【(2025年)情報を追加】添削の評判が悪いため、ついに自らの添削を諦めて、AIを用いた添削(AI-科研費.com)にシフトしたようです。
AI-科研費.comを試しに、使ってみましたが、正直、通常のChatGPTやGeminiを使った方がましです。仕組みも面倒だし、お金を払ってまでやる意味はありません。
「こんなことを添削してもらいたいのではない」といった、AIとのミスマッチ感がすごすぎて、これでは科研の採択どころか、ハレーション(AIが事実に基づかない情報やもっともらしい嘘、存在しないデータなどを生成してしまう現象)が多くて、申請書として嘘八百の内容になる。「科研費の申請書を生成AIを4種(Perplexity、 ChatGPT、 Claude、GEMINI)で書き比べ」も参照ください。
そのため、AI-科研費.comを使う場合は、研究者としてのキャリアを傷つける可能性があるので、慎重に使用した方が良い。過去には、科研の申請書に記載の業績を偽造していた研究者が、数年後にバレて免職された事例もあります(リンク)。
ましてや、機関全体で使用しようとするのはもっての他です。そこまでリスクを負ってやる必要はないです。
AIによる嘘の内容の申請書を提出して採択された場合も、数年度にバレる可能性があります。真っ当な研究者や研究機関には、AI-科研費の使用はお薦めしません。一度、傷ついた研究者のキャリアはほぼ回復は不可能です。ある程度費用がかかっても、URA等のプロによる人的な添削をお勧めします。特に科研費の書き方を知らない若い研究者がこれを使って、それが標準の書き方だと勘違いして、生涯科研費に採択されなくなるのは、大変もったいない。